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ピンポーン ピンポーンなんて、相変わらず素っ頓狂な呼び出し音が、さっきから5分も10分も鳴りつづけているので、俺は仕方なく寝床から起き、自宅の玄関へとノロノロと足を向けた

「よぉ、流しそうめんしようぜ」

扉をあけると友人の束浩史が、半分に切断された長い青竹を小脇に抱え佇んでいた。

「はぁ?何いってんだ、ミュージカルになんか出演る訳ねーだろ」

俺はそう言って扉を閉めようとしたのだけども、束の野郎はお構いなしに、優に1メトル以上はある青竹を抱えたまま、どかどかと部屋の中に進入してきやがるもんだから、野郎が右に左に振り向く度に、周囲の壁や家財道具に当たって、そこらかしこでガシャンとかドカッとかいう音がして、俺はなんだかもういいやって感じになって布団の中に再び潜りこんでしまった。


そしたら、それから何時間だか何分だか何秒だかが経ったかは知らねぇんだけど、顔にビシャビシャと水がかかるもんだから、なんだよとばかりに目を覚まして上体をあげてみると、案の定流しそうめんですよ。

俺の布団の上を跨いで2本だか3本だかの組み合わせられた青竹からせらせらと風流でもなんでもない水音が流れていやがって、俺は恨めしい目で束を睨もうとするんだけど、そこにいるのは束だけじゃなくて、金髪の外人の女3人を含む計4人な訳ですよ。

しかも、すごい陽気な訳ですよ。4人で水滴したたらせながら、フォークでそうめんをすくいあげながらギャーギャー大騒ぎですよ。カーニバルですよ。


あーもうどうしてやろうかななんて思ってる所に、携帯の着メロが鳴り出す訳だから、俺は渋々と流しそうめんで大騒ぎする4人の横をおそるおそるすり抜けながら、家の玄関を抜け、外にまで出て携帯電話の通話ボタンを押してみると

「三枝さん、シーサーがでました!早くこっちに向かってください!!」

って、まくし立てる後輩の東橋京耶の声。

あ?シーサーなんだっけ?あの沖縄の狛犬か?なんて思い返しながら

仕方ないんで、部屋に戻ってYシャツ、背広に着替えて部屋から出ていこうとするんだけど、外人女の一人がはしゃぎすぎる余り勢いあまって俺の背広にそうめんの汁をブチ撒けたもんだから「あーあ」なんてことになりながら、俺はフッと畳の上をみてみると、青竹の上から流れだすそうめんの終着点には、別段 桶の様なものが用意されている訳でもなく、畳の上に水と一緒にそのままべしゃりべしゃりと落ちていたんですよ。