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「はぁ?もしもし何いってんですかぁ野菜ですかぁ?」

現場から水前寺ビルの地下2階の仕事場へと戻ってきた俺たちの目の前に、アロハ姿で頭に手ぬぐいをかぶり片手には鎌をもった50代前後の親父が立っていて、なにやらぶつぶつといっている。

俺たちに気付いたアロハの親父は「おい、こっちだよ。お前らも一緒にこようぜ。明日も。」と、これまたよく解らないことを言い出すので、丁重にその横を抜けながらデスクへと向かおうとすると「おい、おめぇ、親戚じゃねーの?俺はちがうけど、な?」と俺の瞳を見据えながら、紛れもなく俺に対して言ってきたので、俺は「わからないですねぇ・・・」と言いながら、なんでこんなのがここまで入りこんでんだよ。という風に東橋の方を睨みつけた。

しかし、東橋は苦笑いするばかりで何もしようとしないので仕方なく「あの、どういったご用件ですか?」と尋ねてみるが、アロハの親父は天井を見詰めながら「アカダマがうるせぇんだよなぁ・・・」と何やら一人ごとをぶつぶつとつぶやいている。

仕方ないので、守衛を呼んでくれと東橋に言ってから2時間後、その間もずっと天井を見上げながらなにやらぶつぶつと言っていた親父を、やっと現れた二人の守衛が連れさっていった。その際親父は「今日は僕のコンサートに来てくれてありがとう」と守衛に言っていた。


その後、自分のデスクでとりとめも無い書類に目を通しながら仕事をこなす俺に、東橋が「三枝さん、またシーサーがでたみたいですけど・・・今、電話で。」と切り出す。

俺が「え、またかよ・・・」と言うと、東橋は「もういいですよね。一日2回も。無視しましょうか。」と言ってきたので「そうだな」と言って書類に視線を戻した。


この直後、東橋は、「ぼくのバンバンジー!!」と叫びながら再び現れたアロハ姿の親父に背中を鎌で刺され重傷を負うことになるのだが。

このときはまだ誰もそんなことを思いやしないわけだし、空も綺麗な青空だった訳だから、みんなしあわせだった。